SSブログ

「こだま公開講座」講演要旨 浄土真宗の戦争責任<歴史に学ぶ真宗者の未来>(終)  菱木政晴 [2000年7月1日(第60号)]

Ⅴ.機の深信と法の深信の一致は魔法か?

① 「罪の自覚」と「無戒」(反戦反差別)は別のことか?

 「無戒」については今まで説明してきたので分かっていただけると思いますが、反戦・反差別になるでしょう。

 押しつけの道徳、戦争に行けというのを拒否し、戦争に行くことこそが国民の義務なんだということを拒否し、そして全ての者が救われるというのは本願だから、だから国王や神祇に依らないというのは、当然反戦反差別になるはずです。それで、「罪の自覚」と「無戒=反戦反差別」は一緒じゃないかと私は思うんですね。つまり、この機の深信と法の深信との一致ということに関係してくるはずなんです。差別と抑圧と殺戮の穢土(火宅無常の世界)に属し、その穢土を形成するのが凡夫。さっき言ったように、火宅無常の世界を抜きにして凡夫はない、凡夫抜きにして火宅無常の世界はないですね。そのことは親鸞さまは何度も何度も繰り返して言うわけですね。そしてその確信が年貢を取っていた凡夫をも、主人として肩を怒らせていた男をも救う正しい原因、「もっとも往生の正因なり」(『歎異抄』同、八三四頁)という言葉となるでしょう。


Ⅵ.おわりに

 「神祇不拝」というものは、確かに真宗門徒のライフ・スタイルであります。

 私は、当麻を拒否した門信徒たちは、当麻を拝受すると言った教団上層部の人に比べれば、本当に尊敬できる人たちだと思います。

 それはその通りなんですが、しかしですね、ちょっと分かりにくい言い方かも知れませんけれども。専修と無戒というのはね、他のものに依らないということですよね。で、そうなっていないことを批判する時に専修とか無戒ということが手がかりになるでしょう。そこで初めて天皇というものがダメだと見えるんですよ。無戒だから天皇がダメだと見えるんですよ、批判は一人一人の練習問題になるんじゃないですか。実際の生活と闘いの中で批判されるべき「神祇」が発見されるということになるだろうと思います。神社だからいけないんじゃなくてね、押しつけだからいけないと言うことを見てると神社しか国家神道しか押しつけてこないということが分かるんですよ。

 つまり君が代を歌わされるということは、私は国の方針に従う善良な国民ですと。だから私をいじめないで下さいというメッセージになる。どんな歌詞でもそうなると言うんですね、押しつけられれば。「万国の労働者団結せよ」というものでさえもなる。ましてやという話なんです。神祇不拝でさえもそうなり得る、こういうことです。そうではなくて、正に自分が押しつけられて嫌だということとか、そういうことについて実際の生活と闘いの中で批判されるべき「神祇」が発見される、専修と無戒から出発するとそういうことになりますね。

 この流れから言うと、例の「煩悩具足の凡夫、火宅無常の世界は、よろづのこと、みなもつてそらごとたはごと、まことあることなきに、ただ念仏のみぞまことにておはします」(同、八五三頁)のこの響きが数段流れてないといけないと思うんですね。真宗の看板を出していたものが、実は神祇だったということは大いにあり得るわけで、それの発見、浄土真宗の戦争責任ということはそういうことだと思います。浄土真宗と看板出しているけれど、あれは神祇じゃないかということが、この方向では見えるんじゃないかと。無戒、即ち上からの押しつけの道徳を拒否するライフ・スタイルから、どうして国体奉祝・天皇在位○○年奉祝、日の丸君が代の押しつけを座視できようか。

 そして、親鸞だろうが蓮如だろうが、その奉祝を強制されれば、それも強制されれば神祇に他ならないという自覚を、このライフスタイルから生み出すことができるはずなんです。無戒と専修念仏こそは私たちの流儀であって、そのことが自己批判的な闘争になり得る。具体的にどうするかという話は色々ありまして、これはまた具体的な闘いの中でやりたいと思います。そして具体的な闘いの中で困難にぶつかった時に、改めて宗祖の書き残された聖典、特にとりわけ手紙などを読むとですね、決してへこたれない。かといって、やけくそになって玉砕するわけでもない、ねばり強い闘いが展開できるということが分かります。こういうものを闘いの中で裁判の中で皆さんと一緒に学習していきたい、こういうふうに思います。(文責・こだま編集局)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。