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政教分離と八代妙見祭  松岡香城 [2010年4月1日(第99号)]

 八代には、県指定重要無形民俗文化財としての妙見祭があり、中心は神幸行列であることは藤崎宮の隨兵と似ていますが、笠鉾の巡行が呼びものであり、飾り馬は十頭程であるところが明確な差異であろうと思います。地域起しのひとつとして各種の支援があるようです。

 今回、小生がとりあげたのは支援団体である八代妙見祭振興会と市教育委員会との関係です。振興会より協賛依頼が当寺にも届きますが、寺に依頼というのも少々不可解なのですが、市内の各法人への依頼のようであり、任意の寄付ですのでさして問題にしてはおりません。宗派によっては積極的に協力して祭礼の提灯を門前にかかげているところもありますので、浄土真宗の考えを主張することもないと見ております。

 むしろ問題であるのは、封筒を発送する際の表記にあると問いかけたのが今回の報告です。発送人は「八代市妙見祭振興会」とあり、事務局は八代市教育委員会文化課内(電)とあり、そのまま素直に解釈すれば振興会の業務手伝いを文化課で行っていると受け取れる封筒が使われています。これは行政が一宗教法人の為に便宜供与をおこなっているとうけとれます。この疑問について文化課を訪問し、担当主任に説明を求めたわけです。

 当初、政教分離の原則に抵触するのではないかとの問いに対し認識がうすく、神幸行列は神事ではなく宗教行事とは言えないのではとか答えがかえってくる状態で会話が全く噛み合いません。そうでなく神幸行列というとおり神事の一部であると説明するのに大変に手間どってしまいました。そして民間の団体が支援することには何ら反対するものではなく、文化的価値は確かにあるが行政がその団体に表だって便宜供与するのは問題があるのではないかと議論しているうちに、係長も加わってきて三人で、何故寺院へも送附するのか?実際に発送作業を行っているのはどこか?最初の時点では疑問を感じなかったのか?等々の議論が噛み合うようになり、来月中には確たる返答を伺いたい等々、又、団体の役員の方達と話してもいいと思う旨の要望を伝えて当日の訪問を締めくくりました。

 平成二十一年十月十九日でした。来月中にとしたのは妙見祭が11月23日なのでその後出という意味です。しかし返答は考えより早く、組事務所の方へ出向きたいとのことで、10月27日となり当方は組長、副組長、相談員とで、市は文化課々長、係長、主任と振興会の三役という大人数の会合となりました。

 先日話した問題を再度確認し、今後の対応に主眼をおいての協議を交わしました。会三役の御一人が「我々も脇が甘くなっていたのかもしれない」と言われたのが、この時の協議の結論としてもいいかと考えます。神幸行列は当然ながら宗教行事であり、文化課がその事務局と言うのは不適切であろう。今後は留意していきたいとの合意に達したものと考えております。

 この頃、市報で妙見祭の提灯等の頒布のお知らせが紹介してありました。「八代よかとこ宣伝隊」とかいう団体の名称を使っており、祭礼の文化・歴史面は文化課にお問い合わせ下さい、となっていましたのでこの形ならばいいのではないかと考えたことでした。

 今から検討すべきことは多々ありますが、行政は必ずしも意図的に一宗教に協力している訳ではない。民族文化としてみている場合も多く、支援をうける団体にも政教分離の認識はうすいということは言えると思います。気付いたものが働きかけをしていくことが必要であり、それは双方にとって有益と言えるでしょう。八代市について言うのであればまだまだ問題はあります。小生が今回、本派八代組々長としての立場だけで訪問したのは前述のとおり、妙見祭に積極的に協力する宗派もあり、八代仏教会としては動けないこともあります。

 小生はとりあえず仏教会副会長です。仏教会の活動として市社協との共催という形でお盆の万灯流しを実施しておりますが、社協の会長を市長がつとめておりますので総責任者は市長となります。妙見祭と同質の問題があると考えます。社協のトップを民間人にするべきとの提言を際々いたしているのですが仲々に実現しません。神道、キリスト教の立場から見れば一宗教法人ではないが行政が仏教に肩入れしている様にうけとれるでしょう。これもまた行政の方にはその認識がないのであろうと考えます。極論ながら、場合によっては訴訟の対象になるやもしれません。政教分離ということが宗教間の争いになることなく適切な解決がはかられ、伝統行事支援という方向にすすんだことは、今回の教育委員会との対話を試みたことが無駄ではなかったようですし、振興会の対応にも敬意を表するところです。今回の提案は一般の方々にはなかなか理解してもらえない面がありますが、御門徒で市関係の方々などには少しは話しています。

 結局のところ、信心を頂いた個人が他の信心についても知り、行政の支援が逸脱することのないように関心を持っていくということに帰するかと考えているところです。〔八代組々長、正現寺住職〕


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浄土真宗の法話に思う  倉岡光紀 [2010年4月1日(第99号)]

 私は、仏教を知ってもらうにあたって、先ず、「神と仏」の違いを話します。それは五十回忌後には、先祖は神様になられるので、仏教の法事はしなくていいと考える人がいるからです。

 浄土真宗の法事を先祖供養と考えている限り、神道と同風土といえるのではないか。死後浄土を考える場合、神道とどう違うのかを納得できるように門徒に説明すべきだと思う。

 念仏を通して死後往生を願いなさいと言ったら、祈願とどう違うのかをきちんと説明すべきと思う。死後往生を願うのではなくて、「地獄一定すみかぞかし」の自覚が肝要ではないか。堕地獄の私を浄土へ導いてくれる如来への御恩報謝をどうしたら獲られるかを説くのが真宗の話。それには、「どうしたら仏に遇えるのか」が肝要。名号を唱えるだけでは・・・という報恩講の御文章。有難い名号のはたらきだから「疑わず信じなさい」「他力ですから何の行も不要」「信じるそのままで結構」で信心が生まれるでしょうか。証拠がなければ信用しないのが人間。人はどこで仏に遇うのか。仏に遇うとはどういうことか。僧はその体験をしているのか。世俗からプロと言われるには、何が必要か。

 「他力だから」「信じる」だけの法話で、人は満足しているだろうか。如来の慈悲は、親子の情愛にたとえられるが。果たしてそれで十全なのか。世の中の全ての家庭が親子の情愛が満ち足りているのか。

 やはり、仏は法身に基底を置くべきだろう。それが報身となり、決して応身ではないことをしっかり習得させないと浄土真宗は崩れてゆく。法身をどのように把えるか、各寺の住職さんの力量です。

 自力の把え方も、その他諸々の門徒さんへの話も、表現の足らぬところ、誤解されやすい所なのか、住職の誤解なのか、究むべき所が多々有ると思います。仏をどのように分かり易く伝えるか。布教使の話が教科書に止まっている限り、法話とはいえないのではないか。

 戦後生まれの人は、今年は六五歳になります。まして民主主義、個人主義、個性化、マンガ世代の人々にはどう説くべきか。徳川時代と同じ論法でいいのか。浸透するのか。とくと考える現代だと思う。布教の論は、私には、お上に従順な和の世界にしか見えない。阿弥陀経に見る五色の蓮華は、個性の調和ではないのか。個性があって、和を形成する。初めに「和有りき」ではない。誕生仏の「天上天下唯我独尊」の言も、無量の諸仏にも通ずることではないでしょうか。現代に通ずるキーワードを押さえれば事欠かないと思います。

 法話は感覚的、情実的では受け容れ易いけれど、誤解にもつながることを忘れないでおきたい。世俗との闘いにおいてまさに汚泥の中です。法をたよりとして、この道を行くしかありません。草の根運動です。無常だからこそ新しい人との出会いもあります。無常は愉しいものです。〔益東組・玄高寺住職〕


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編集後記 [2010年4月1日(第99号)]

◎政教分離を考える場合、立場によって視点が異なり考えが違い、議論を重ねてもすっきりした結論に至らないのが「重要文化財・重要無形民俗文化財」等に関する件である

◎昨年完成をみた御影堂修復事業への巨額の国庫補助金に対しても「現に宗教活動をしている一教団の建物に公費を支出して良いのか?」という疑念を抱いた人もいたのではないのかと思ったりもした

◎松岡氏が、「県指定」とはいえ、妙見祭の運営に行政がどこまでの関わりが可能か、便宜供与・支援逸脱では、との視線で話し合われた問題点を執筆いただいた。お互い各地でこのような思いと意気込みを持っていきたいものである

◎宗門は、今日の必須の課題である「時代に即応する教学」の樹立に取り組んでいるが、倉岡氏は、これらの問題に対する日頃の氏の真摯な思いをご寄稿いただいた

◎本紙は、皆さまの温かいご支援によって、次回、七月一日発行をもって百号を数える。改めて皆さまに感謝申し上げると同時に、内容は問いませんのでご寄稿をお願い申し上げます。

◎彼岸も過ぎ、桜は満開を迎えているのに、朝晩は冬の気候・・、どうかご法体ご自愛下さい。 
《崇信》
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