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ハンセン病と浄土真宗―菊池恵楓園にご縁をいただいて―  合志組・真教寺住職 寺尾徹照 [2001年7月1日号(第64号)]

 私が初めて、菊地恵楓園にご縁をいただいて、お参りに行くようになりましたのは、平成2(1990)年からであります。

 それまでというのは、私の身近なところにハンセン病の療養所があるなぁといった感じでありましたが、いつもこの療養所の横を通ってご門徒のお宅にお参りに行くのに、車窓から眺める高い壁のことがいつも気になっておりました。なにゆえこのような高い壁を築かなければならなかったか、大変不思議でなりませんでした。

 それとこのことは、私が園内に足を運ぶようになってからわかったことではありますが、園に入所なさっておられる多くの方々が、本名のほかに園名をもっておられるというお話を職員の方からうかがって大変驚いたことでありました。

 しかしながら、お参りのご縁をいただいて、入所なさっておられる方々から、さまざまなお話をお聞かせいただくことによって、私自身のハンセン病の学びの場となったことは大変有り難いことでありました。

 園に入所なさっておられる方の大半は、何れかの宗教に関わっておられ、私が園にお参りに行きますのは、園内の真宗の御門徒の方が亡くなられた時だけであります。「よとぎ」にお参りにあがった折に、ご本尊さまが安置されていないのに気づき、すぐさま園の職員の方にお願いいたしまして名号軸をとりよせていただき、亡くなられた身寄りの方々がおいでている時は、園内の入所なさっておられる方々と共におつとめをさせて頂きます。入所なさっておられる方々の中には、熱心におつとめの勉強をなさっておられたり、仏教讃歌を知っておられる方々もおられて私自身が感心させられたことであります。

 というのは、この園内には、昭和2年頃結成された真宗報恩会という会がございまして、その会員の方々を中心にいろいろな行事や、おつとめの準備等がなされており、一生懸命なさっておられる姿を目の当たりにした時、ものすごく感心させられたことでした。これもひとえに、今までこの園に足を運んで下さった多くの方々の御教化があったればこそと思わしていただくことであります。

 しかしながら、この報恩会の方々も高齢になられ、亡くなっていかれたりして会員が減り、報恩会を存続していくことが困難になり、平成七(一九九五)年に解散することになり残念に思いましたが、平成8(1996)年には、あらたに真宗同志会が結成され、その方々が中心になっていろいろとなさっておられるようです。私自身、真宗報恩会が解散する前に、二・三回ではありますが、会員の方々よりいろいろとお話を聞かせていただく機会がありましたが、これからはもっと多くの方々と出会い、共々に学びを深めていくことが大切なことはないかと思うことであります。

 数月前より地元の役場のところにも「ハンセン病を正しく理解する週間」という大きな看板がたてられまして、こうした取りくみも当然大切なことであると思いますが、私は、一人ひとりがこのことに関してお互いの学びを深め、もっと園に足を運んで共に語り合える場をつくっていくことが何よりも大切なことではないかと思います。

 私は、お参りの度に思うことではありますが、入園者の方々には、それぞれふるさとがあり、ご家族、身寄りのあられる方々が殆どかと思います。そして昔からのおつきあいのあられる手次寺がおありかと思います。入園者の方が亡くなられた時は、ご家族、身寄りのあられる方にあっては、ふるさとにて手次寺のご住職におつとめをして頂き、ふるさとのお墓に納骨できないものか、一日も早く入園者の方々が社会復帰が出来、いつの日か堂々とふるさとに帰ることが出来るならばと、そのことを切に願ってやみません。

 ハンセン病に対する偏見と誤解は大変根深いものがあり、問題も山積しているかと思いますが、それらの解決に向けて先ずは私に何ができるかを身近なところから見いだし行動していくことが大切なことではないでしょうか。 合掌〔合志組・真教寺住職〕

証言・ハンセン病 もう、うつむかない

証言・ハンセン病 もう、うつむかない

  • 作者: 村上 絢子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2004/03/11
  • メディア: 単行本


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