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2013年7月1日号(第112号) ブログトップ

「非戦・平和を願う布教大会」を通して  橘 孝昭 [2013年7月1日号(第112号)]


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6月19日(水)熊本別院本堂にて「非戦平和」をテーマにした布教大会、「非戦平和を願う布教大会」が開かれました。天岸浄圓師を始めとする総勢5名の布教者が立たれる中、正直申し上げ、予想を上回る(?)数の聴聞があり結果的には100名前後の参拝があった様に感じています(カウントはせず、記帳所も設けなかった為推定人数)。

鹿児島からの聴聞もあり、会場は熱気に包まれていた…と書いてもあながち大袈裟な、的外れな表現ではなかったと思います。


ボツボツの人数で、どれ位集まるだろうか…という思いの中での開催だった為、当初用意した資料は50部ほど。しかし、それもあっという間に無くなってしまい、更に追加でコピーに走ること三回。何度も間に合わずに、申し訳ない思いで資料を手渡していた事を覚えています。

私自身は受付におり、その場所から会場を眺め聴聞をさせて頂いていました。5名の布教者の「ご法話」はそれぞれ熱があり、印象深いものでしたが、そのこと自体をここで書く事は「ご法話」である以上適当ではないと考えますので控えさせていただきます。

また、受付にいて印象的だったのは、「自由懇志とは何ですか?」という反応を示す方が意外に多かった、という事でした。初めてお参りした方だろうな、という印象を持つ方が多数聴聞されたように感じていました。

ここではこの大会を通しての感想そして企画意図など、大会開催に当たりその背景等をお伝えできたらと考えています。


今年に入り2月1日に今回の主催である「非戦平和を願う真宗者の会・熊本」の会議が熊本市にて開かれました。会議の主題は、マンネリ化した会の活動を今後どうしていくのか、という内容であり活発な意見が出にくい重苦しい会議でした。

会議が重苦しかったのは、活動がマンネリ化しているからというよりも、先の衆院選の結果安倍政権が誕生し、自主憲法制定論の潮流が急に現実味を帯びてきたからに他なりません。

先に自民党の発表した憲法草案は「改憲」というよりも、正に「自主」憲法の名にふさわしい、この国の在り様を、この国に住む人々の人生を、生活を全て変えていくような、全く違う印象を持たざるを得ない憲法草案であることはご承知の通りであります。

「国民主権」「基本的人権の尊重」「戦争放棄」に貫かれた現・日本国憲法とは全く違う、「天皇元首」「基本的人権の制限」「(集団的)自衛権の行使」という全く違う輪郭が自民党草案からは浮かび上がってきます。


ハンセン病市民学会共同代表である志村康氏は「法律を制定したからと言って、世の中が変わるとは思っていません。しかし、法律があるから我々が(ハンセン病差別に対する)運動をする『根拠』が成り立つのです」という趣旨を仰っていました(発言文責、筆者)。


宗祖・親鸞聖人は『承元の法難』により兄弟子4名が死罪になり、自身は流罪となり還俗させられました。「僧尼令」という法がその根拠となりました。

そして明治以降の十五年戦争を含む戦争時には本願寺教団は積極的にこれに加担していき、莫大な浄財寄付のみならず多くのご門徒・子弟を戦場へと送り出していきました。「徴兵制」「治安維持法」等を支える大日本帝国憲法がその根拠となっていました。

どちらも時の政府が「法」を根拠に裁き、そして働きかけてきた(またはこちらから加担してきた)結果である事は言うまでもありません。


しかし、その逆に志村氏が仰る通り「法」は我々が自らの主張を運動できる(働きかけられる)『根拠』ともなり得るのも事実です。

例えば「憲法九条」があるから、敗戦以来「日本国」の名のもとに一人足りとも他国の方を銃弾によって殺したという事実はありません。国内に目を向けても「基本的人権の尊重」が水俣病問題や、ハンセン病問題そして福島原発事件など社会に潜む様々な問題を暴き、広く社会に問題提起をする根拠となっています。


我々仏教者は釈尊の教えである「いのちの平等と尊厳」を否定出来るものではありません。ならば、その教えを脅かすものがあるとするならば、今一度現在の状況を、そしてこれからの行く末を問い直し、多くの方々と共有できるならば、という趣旨のもと会議の中で発案され、以後の開催について検討されていきました。


6月23日の東京都議選は43.5%という投票率の中、立候補者全員当選という自民党圧勝で幕を閉じました。次は参議院選挙です。その結果次第では憲法が全く違うものに変わっていく可能性が高まっていくという事でしょう。

繰り返しますが、これは王法(世俗)の話ではなく仏法の話だと考えます。状況次第によっては我々の宗教活動は大幅な制限を受ける可能性は十分にあると考えます。いくら仏法を大事にしようとも、戦時中に(こともあろうに)お聖教に墨を塗っていったように。(宇土北組・正栄寺住職)


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益南組重点プロジェクトの取り組み  粟田国彦 [2013年7月1日号(第112号)]

この「こだま百十二号」が発行される2013年7月1日は東北地方太平洋沖地震が発生してから844日目。この間ずっと震災は続き、今もなお多くの被災者が苦しみの中にあります。熊本教区内でも震災支援の営みは多くの僧侶・門信徒によって続けらています。今回はその活動の中でも「組」単位で震災支援に取り組んでいる益南組の様子を粟田国彦師に報告いただきました。


 昨年4月、組サンガプロジェクトとして中央や教区に先駆けて益南組は『東日本大震災の被災者に寄り添う』ことをテーマにして取り組みを始めました。

○組サンガプロジェクト趣旨
組の教化団体を始めとして組全体で一つのテーマの下に取り組む

○実施計画と結果
①被災地支援活動ボランティア派遣の為の資金活動
結果;各種総会でのカンパ活動並びに組内寺院へ資金協力依頼で約25万円の資金確保
②情報収集を兼ねた被災地支援活動ボランティア派遣
僧侶2名 大学生2名派遣
③若婦人研修会として支援活動報告会の開催
結果;7月7日開催;約50名の参加
④夏休みの子どもの集いでお茶会活動へ送るお菓子へ子どもたちのお手紙を添える
結果;約30通の手紙を添えて送る
⑤第4ブロック仏壮大会に飯舘村役場に勤める杉岡誠善仁寺住職を招き講演会の開催
結果;約250人の参加
⑥資金活動の為のバザー開催
結果;組内寺院や門信徒から物品を集めて仏壮大会で販売98000円の収益
⑦お茶会活動へのお菓子や果物の提供
結果;傾聴ボランティアであるお茶会活動へお菓子を2回・みかん1回の送付。相馬組3回忌法要へお菓子の送付
⑧被災地追悼訪問と三回忌法要への参加
結果;九月に四名の僧侶が被災地を訪問、杉岡誠善仁寺住職と面談。3月8日に仙台別院での三回忌法要へ組長と随行の僧侶が参加

○取り組んでみての課題と今後の方向性
①資金活動の方法で大会や各寺院へ依頼するのは今回限りで支援活動に参加するのは基本的に自費で参加する。
②それでも定期的に被災地を訪問したり支援活動に参加したり、当地のボランティア団体と連絡を取り合うことはとても意味の有ることであり、今、どのような取り組みができるかを常に探っていかなければならない。
③なるべくお金を使わないで長期的に持続していくことが重要。
 現地から呼べないなら、こちらから出向く、出向くことが出来ないなら、こちらから送る、送ることが出来ないなら、向こうから取り寄せて販売する。といった流れ(お金のかからない流れ)
④支援の仕方として現地で生産や加工されているものを(特に福島)取り寄せて販売する。または集会や研修会で茶話会、懇親会で利用する。
⑤昨年は阿蘇地域で水害があったように、自らの足下を見つめる意味で組の寺院を中心とした防災計画をつくる。

○被災地支援活動ボランティアに参加した大学生の感想
私が伝えたいことは、何かやってあげたい、スタートはそれでいいと思います。でも、やってあげる、やってあげた、といった感覚は違うのではないかという点です。一緒に頑張ろうは間違いではないです。でもそれを強要するような感覚でボランティア行きました、しました、というのは私の中では違いました。
すごいね、ボランティア偉いね、って違うんです。偉いとかの感覚が少し違う。
私は本当に少し大変な友達の家に、遊びに行って、その子の顔見て、一緒に遊んで帰ってきただけです。
いまはまた、少し感覚も変わってきました。正直偉そうな話が出来る立場でもありません。東北が誰よりも他人ごとになっているのは他でない私だと思うからです。(益南組・皓月寺住職)


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編集後記 大松龍昭 [2013年7月1日号(第112号)]

●「非戦・平和を願う真宗者の会・熊本」が主催して、初めて行った「非戦・平和を願う「布教大会」」。間近に迫った参院選の結果次第では、いよいよ憲法の改正が現実化してくる、その強い危機感がこの試みの背景にはある。投票に影響を及ぼすほどの成果は期待すべくもないが、ただ、「み教えに照らして『非戦・平和』を語る」事の意味と可能性は、想像以上に感じ取られたのではないだろうか。

●宗門の「重点プロジェクト」より先んじて取り組まれた、益南組のサンガプロジェクト。特に、ボランティアに参加した大学生の感想が印象的だ。宗門が言う「そっとつながる、ホッがつたわる」が、このような意味なら納得し得る。大切な示唆を頂いた思いがした。 (大松)


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