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憲法九条を守りましょう  大分哲照 [2004年7月1日号(第76号)]

◆憲法を守らない小泉首相
 2004年4月7日、福岡地方裁判所において、亀川清長裁判長は、「内閣総理大臣の地位にある被告小泉の靖国神社参拝は、憲法二十条三項に反するものというべきである。」との明確な判断を示しました。

 内閣総理大臣の靖国神社参拝に関して、「裁判所が違憲性についての判断を回避すれば、今後も同様の行為が繰り返される可能性が高いというべきであり、当裁判所は、本件参拝の違憲性を判断することを自らの責務と考え、前記のとおり判示するものである。」と結んでいます。

 しかし、今回の判決後も、小泉首相は「おかしいね。なぜ憲法違反かわからない」と述べ、今後も靖国神社参拝を続けていくという見解を述べています。(2004年4月8日、朝日新聞社説)

 憲法尊重擁護の義務(憲法九九条)を持つ内閣総理大臣としての資質を欠く、まったく「ふざけた」発言です。

 「わからない」を連発して、ごまかしているようにしか受け取れません。「自分自身がわからなければ、何をしてもよい。」「なぜ刑法違反かわからないので、殺人を続ける」という論理構成と一つも変わりません。

 この「小泉首相靖国参拝九州・山口違憲訴訟」には、多くの浄土真宗僧侶・門徒の方々が、原告として参加していました。私も、原告の一人でしたが、歴史に残る画期的な判決が出たことを喜んでいます。

◆教団の戦争責任
 歴史を振り返ってみますと、私たちの教団も、宗祖親鸞聖人のみ教えに背き、国家の政策に追従して人々を戦争に駆り立てていった歴史を持っています。

 「後の世を弥陀の教えに任せつつ いのちをやすく君に捧げよ」(明如上人)に代表される真俗二諦論を、浄土真宗の教義理解の基本的な枠組みとして、門徒の方々に徹底して教えました。

 そのことにより、「戦死は菩薩の行」であり、「靖国浄土」とまで言い切った戦時教学なるものまで生み出し、仏祖に背き、戦争に協力していきました。

 何よりも、その反省から敗戦後「宗法」第二条に「他力信仰の本義の開顕に努め、人類永遠の福祉に貢献することを目的とする。」と謳い、お念仏のみ教えを伝え、世界の平和を実現するために、浄土真宗本願寺派なる教団の存在目的があると定め、敗戦後の歩みが始まったはずです。

 また、今日においても基幹運動の重点項目④に、「過去の過ちに学び、平和を求める念仏者になろう―非戦・ヤスクニの課題を担い、平和への確かな歩みを―」とあげ、二度と過ちを繰り返さないようにとの願いから、基幹運動を推進してきました。

◆戦争は人類最大の愚行
 いかに、「聖戦」であり、「正義の戦」といっても、戦争は「いのち」の奪い合いにほかならず、「仏教における平和主義」(長尾雅人著『仏教の源流』)から、最も遠い、最も愚かな行為と言わざるを得ません。

 仏陀釈尊は、「争いは争いをもって止めることはできない。ただ忍のみが争いを終息させることができる。」と、弟子たちを誡められました。

 原始経典の『スッタニパータ』には、「生き物をみずから害すべからず。また他人をして殺さしめてはならぬ。また他の人々が害するのを容認してはならぬ。」と示されています。

 宗祖親鸞聖人が、直接お念仏のみ教えを聞かれた法然上人の伝記においても、上人が幼い時、賊に襲われていのちを終えていく父・漆間時国が、「敵を怨むことなく、報復を考えてはならぬ。報復を考えるならば、輪廻の絶えることはない」と諭されたと伝えられています。

◆憲法九条を守りましょう
 今、日本政府は、世界に誇ることができ、二十一世紀においてこそ人類の貴重な財産として真価を発揮する「日本国憲法」を変えようとしています。

 「戦争放棄」を規定した第九条を改め、いつでも戦争のできる国にしようとしています。

 2003年のイラク戦争においても、小泉首相はアメリカのブッシュの言いなりに、国連決議もないまま自衛隊をイラクに派兵しました。

 今また、サミットに出かけて、明らかに現憲法に違反する「多国籍軍」に参加すると表明しました。国会での議論もないまま、このような大事なことを軽々と約束してしまう小泉政権は、日本を再び戦争国家にしてしまう、きわめて危険な政権といわざるを得ません。

 伊藤真さんは、「中高生のための憲法教室」(『世界』二〇〇四年六月号、岩波書店)の中で、憲法九条を「邪魔だと思う人たちが、憲法を改正したいと考えることは当然のことでしょう。ですが、そもそも憲法はそのような考え方にあらかじめ歯止めをかけて、国家が軍事的に暴走したり、その結果国民を犠牲にしたりすることを防ぐために作られたのですから、憲法を改正して軍隊を持たないという歯止めをなくすとなると、国民のほうは相当の覚悟が必要になります。」と記しています。

 いままさに、九条を守るか否かが、私たち一人ひとりに問われています。

◆参議院選挙に向けて
 私たちは今、参議院選挙を七月十一日に控えています。この選挙の後、衆議院の解散がない限り次の国政選挙は、三年後の参議院選挙になります。

 いかなる議員を選出するのか。これは、もっとも大切な国民一人ひとりの課題であり、同時に浄土真宗門徒一人ひとりの課題です。

 憲法九条を守り、平和な外交を目指す人を選ぶのか、憲法九条を廃棄し、戦争への道をひた走る人を選ぶのか、重要な選挙です。

 再び仏祖のみ教えに背くことがないように、そして二度と戦争に加担しないように、心して参議院選挙に臨みましょう。(福岡教区西嘉穂組明円寺住職)

憲法九条の戦後史

憲法九条の戦後史

  • 作者: 田中 伸尚
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2005/06
  • メディア: 新書


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