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真宗信心の内実を問う―口業と意業と―  大谷派明願寺住職 久保山教善 [2001年4月1日号(第63号)]


「めでたさも ほとんどない『がしかし』の春」
「鬼さんが痛そう かわいそう というような子に 育ててみませんか?」
「身勝手な 幸福追求 日常不毛」
 以上の三つは自坊道路に面した掲示板の、今年に入ってからの言葉である。掲示伝道法語とは呼べない代物だが、一応自前、オリジナルである。あえて註釈すれば、1月は一茶への返句、2月は節分行事する仏教寺院への批判、現在(3月)も同種の類である。亡き母から壁新聞と酷評されていたが、「変っている」「おもしろい」と読んで下さい、定例の学習会に夫婦で、更には友人を誘って参加なさるお西の若手僧侶の来寺のきっかけになったことは、私を勇気づけている。

東西の壁は乗りこえれぬか?
 3年前の蓮如500回法要も終わってみれば「バラバラでいっしょ(東のテーマ)」に行えなったし、このままでは10年後の宗祖750回御遠忌も、東西本願寺別々に勤修されるであろうことは目に見えている。親鸞に背き、手垢まみれにしてきた世俗の教団には、もはや自浄作用は不可能だろうか?
 1989年11月から始まったベルリンの壁解体は、遂に政治体制・思想の壁をもぶち壊し、民族の悲願・東西ドイツの統一を成しとげた。昨、2000年6月には、南北朝鮮のトップ会議が実現、ここでも〝統一〟への曙光がきざしてきた。
 なのに何故、宗祖も、所依の経典等も一緒でありながら、東西本願寺は一つになれないのか?人為的に分断されたものは人為的に修復できると考えるのが、単なるたわごととお思いだろうか?以下、私の気付いた範囲での真宗教団の現状・問題点を提起する。東の一員だが、西の藤岡師とは基本的に見解が同一であると確信している。

真俗二諦のナレの果て(口先だけの御安心)
 1968年に始まった部落解放同盟による、難波別院輪番の差別事件糾弾以来、教団当局は「同和と靖国は避けて通れない問題」といい続けてきた。そういいながら見事に避けて通っている。精神主義を信奉し「自己とはなんぞや、を明らかにするのが信心で、同和・靖国等やってる暇はない」とまでいいきった元宗務総長も、差別発言で糾弾されることとなる。事はトップ個人の問題でなく、官僚や議員たちの体質、ひいては彼等を結果として認め支えている我等教団人全体の「機の深信を欠いた生きざま」そのものにあるのだろう。在野の運動体からの糾弾に対してはこの上なく謙虚で、我等教団内ならの告発等には耳を傾けようとしない。そのような使い分け・お上的有り様こそが差別的なのだ。
 戦争・靖国、原発・環境等の問題(人間そのものが地上から抹殺されていく危機)を危機と感じない鈍感さの一方で、こうした問題こそ人間の罪業の具体的相であり、信心そのものの課題だと取り組む教団内少数者(反靖国連帯会議や真宗遺族会等)に対しては、敏感に敵意すらムキ出しにする。即ちそうした問題をどこまでも外に覩て、やれ政治問題だの社会問題だのといいつつ、仏法=内観の道という極めて単純な二元論的図式に観念的に固執していく。「身の方が正直」であること「ボーズはポーズだけ」ということは、とっくに門徒大衆の看破する所だが、懲りない面々は自公保与党の代議士よろしく、選挙前になると立派(そうな)コーヤクを口にする。
 私はかねて、選挙そのものが浄土真宗の宗風になじむのか?という疑問を抱いている。藤岡師はおそらく娑婆以下の態で争われてきた(であろう)選挙の様をじかに体験しながら、あえて教団内の〝心ある〟人々の目覚めと勇気を待ってあるのだろう。

地縁・血縁も脱け出れず
 私も数年前、宗会議員選挙で義弟の側に立たないという苦渋の選択をした。〝しこり〟みたいなものは未だに当然のこととしてある。しかし、それ以上に得たものは大きい。善鸞義絶の意味が少しは読みとれるようになったし、日頃「仏縁・法縁の尊さ、重さ」を口にしながら、イザ選挙ともなれば〝しがらみ〟から一歩も出れない欺瞞・自己矛盾は少なくとも超えられたと思う。
 最後に一言!親鸞聖人を宗祖と仰ぐなら、せめて一度位は「主上臣下、法に背き義に違し、忿りを成し怨みを結ぶ。」という言葉を、実際に声に出してみることだ。それも地元・自坊で。そのことがいかに勇気のいることかを実感できる近道であり、同時に藤岡師のこれまでの地道な御苦労の意味を領解できる手だてでもあろう。

終わりなき歩みを共に―親鸞の生涯に学ぶ

終わりなき歩みを共に―親鸞の生涯に学ぶ

  • 作者: 和田 稠
  • 出版社/メーカー: 樹心社
  • 発売日: 1994/11
  • メディア: 単行本


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