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最近気になることとスリランカ僧支援について  源 重浩 [2009年1月1日(第94号)]

 アメリカ発の世界経済不況のあおりで、このところメディアが取り上げなくなっている問題に、ミャンマーとチべットの問題があります。両国の宗教は仏教ですから、同じ仏教徒として私たち日本の仏教徒にも、両国の近年の社会情勢はとても気になるところです。

 ミャンマーは現在軍事政権が続き、1年半前灯油の値上がり等で生活に困窮する市民が大規模デモを行った際、赤褐色の衣を着た僧侶たちの姿が目につきました。そのデモには六百人の僧侶が参加していて、政府軍の弾圧により、市民だけでなく僧侶にも多数の負傷者が出ました。市民だけでなく僧侶にも死者が出ていると噂されます。

 現在中国の支配下にあるチべットは、かって独立国で、伝統の文化や宗教があります、その文化や宗教を教えない学校教育が、中国政府によりつづけられていますが、そのような教育を50年も続ければ、若い人達には伝わらず、やがて独立を主張する声は消えてしまうと政府は考えていると、言われています。

 ミャンマーにしてもチべットにしても、ともに国家権力が、一般の人々と仏教という宗教を、弾圧している訳です。

 話の角度は少し変わりますが、仏教は2400年程前にインドで出発した訳ですが、そのインドには現在仏教はありません。一三世紀イスラム軍の侵攻によって仏教の寺院、学校、施設は破壊され僧侶は殺されました。南に逃げた僧侶もいますし、北のチべットに逃げた僧侶もいます。基本的にはその時にインドから仏教は消えて無くなってしまったのです。厳密に云えば現在インドには、国民の0.8パーセントの仏教徒がいます。これはしかし第二次世界大戦後アンベードカルの仏教改宗運動によって得られたもので、大勢から云えば、インドにおいて仏教は13世紀に滅亡した、というのが実情だと思います。原因はイスラム軍の侵攻によってと云いましたが、どうもそれ程単純な問題ではないようです。

 ある時期から、「インド仏教は何故亡んだのか」ということが気になって少しずつ調べています。日本仏教に対する危機感が高まるのと呼応するような形で、私の中にこの「インド仏教滅亡の原因」が気になるようになりました。

 イスラム軍の侵攻は、インド仏教滅亡のきっかけにはなりましたが、根本原因ではなかったように思われます。当時の仏教は密教化し形の上では僧院の巨大化という問題を抱えていました。密教化ということは、仏教がヒンズー教化して、仏教だかヒンズー教だか分からないような状態になっていたということです。僧院の巨大化というのは、お釈迦さまの時代は、6~7人がひとグループになり托鉢に行き村人から食べものをいただくという形だったのが、一つの僧院で千人もの僧侶がいれば、とても村人は支えきれません。王さまから農地を寄進してもらった僧院は、耕作は村人にまかせ収穫を僧院に運ばせるという形に変わりました。托鉢が無くなれば僧侶と村人(民衆)と接触する機会が無くなります。村人は働かされて収穫物を僧院に届けるだけ、僧侶は僧院でただ学問ばかりやっている、ということでは、村人(民衆)からすれば仏教(教団、僧侶)は何のためにあるのか、ということになるでしょう。イスラム軍が撤退した後、民衆は王さまに仏教の復活をたのみませんでした。インド仏教が滅亡した根本理由は、仏教が民心から離れてしまったためと考えられます。

 前述した、ミャンマー軍政下において、僧侶は市民のために、ともに抗議行動をしていますから、現在は弾圧されていても軍政が終われば必ず復活するでしょう。

 もう一つ、スリランカ僧の支援について述べておきます。日本政府による国費留学で現在日本に滞在中のスリランカ僧が、大学職員の事務上のミスで、本人には全く責任がないのに、費用が全くおりなくなってしまいました。私が知っている僧侶でもあり同じ仏教徒ですので、支援のための講演会を企画しています。「スリランカの仏教事情」というテーマで、すでに3回講演会を開きました。スリランカにはお釈迦さま在世当時の仏教が今でも殆んどそのままの形で残っています。どうか講演を聞いていただければと思います。〔宇土北組・光国寺住職〕



スリランカの仏教

スリランカの仏教

  • 作者: リチャード ゴンブリッチ
  • 出版社/メーカー: 法蔵館
  • 発売日: 2002/08
  • メディア: 単行本



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