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「通夜・葬儀」を「仏事」とするために  三組(八代組・種山組・益西組)合同の取り組みを通して  大松龍昭 [2011年1月1日(第102号)]

ここに述べる内容は、葬儀社主導の「通夜・葬儀」の問題点を問うてきた、近隣三組の取り組みの報告である。つまり、僧侶である私たちの関わりが奪われたことが、「通夜・葬儀」の形骸化を招いた、という認識がそこには確かにある。しかしそれは、その葬儀社抜きにして成り立たない現実を早くから目にしてきたにも関わらず、「共に向き合い、共に考える」という、至って当然の作業を私たちが怠ってきたからにも違いない。

以前から取りざたされながら進まなかったこの作業は、三組という枠組みに広げた所からようやく動き出した。昨年に三組の組長・相談員の六人で検討委員会を立ち上げて、そしてそこで色々と出された問題点を各組に持ち帰りながら、最終的には「最低限これだけは」という五点に絞られた。それは、

①「通夜・葬儀」の日時の決定について、
②「友引」について
③「清め塩」について
④「告別式」との表現について
⑤「お見送り」について
、である。

①は、主に斎場使用の都合等により、得てして葬儀社と遺族の間で先に決められている事を問題としたもの。ここで早くも僧侶の関わりを軽視されたのでは、その後全般に支障をきたすことになるからである。例えば、②の「友引」の問題は、この日時の決定の所でやり取りされるわけだから、その場に立ち会えなければ後手を踏むだけでなく、私たちの説明責任も果たせなくなってしまう。

③の「清め塩」の問題は、すでに解決している地域も少なくないはずで、この点は「遅まきながら」と言う他はない。

④は、要するに葬儀は「告別式」にあらずとの主旨。葬儀は「浄土」というまた会える世界を確認する場であり、また亡き人は仏と成って常に私たちに働いて下さるから、私たちの合わせる手の中に、こぼれる念仏の中にいつでも会うことができるのであって、決して「別れ」ではないと。要するにこの 「告別式」 の問題は、「法にあうご縁」、即ち 「仏事」としての葬儀の意義そのものに関わるのであって、最も看過できない問題だと私は考えている。

⑤は、通夜・葬儀終了後に、遺族を出入り口に立たせて会葬者に礼をさせる、昨今斎場で良く見られる光景である。しかし、大事な人を亡くし顔を伏せて悲しむ遺族を出入り口に引っぱり出す事は本末転倒と言えないだろうか。会葬者が遺族の元に足を運んでお悔やみを申す、そうした本来性が失われるのではと危惧するのである。

以上、こうした五つの問題点について、まず近隣の葬儀社八杜にアンケートを送付して、その認識と対応を調査し、またそれらを資料化して三組合同で門信徒会運動研修協議会を開いて意見の集約を図り、そしてその葬儀社八社(出席は七社)との協議会を設けるに至った。今回は、全体的に僧侶側の問題意識を理解してもらう形となったが、葬儀社サイドの抱える現場にも配慮しなければ、この問題の解決がないことも確認できた。

考えてみるに、私たちは葬儀全般に対し、何かしら冷めた態度で接してきたような気がしてならない。仏教が本来、そうした営みを目的としていないことは、僧侶なら誰でも知っているからである。だから、どこかでそれを「俗事」として見てきた傾向がなかっただろうか。自らの法務の大部分を費やし、しかもそれに寺の収入基盤を頼ってきたにも関わらず、である。葬儀社と向き合わず、現場の主導権を彼らに許してきた要因が私はそこにもあると思うし、昨今の「直葬」や「葬儀不要論」も、そうした私たちの姿と無縁ではないはずだ。

だから、『こだま』の記念講演会で青木新門さんが、映画『おくりびと』に寄せてお話をなさった時、「あの『おくりびと』は、「送りっぱなし」で終わってる」と指摘されたが、それは僧侶に向けられた言葉に私には聞こえたのである。つまり、葬儀を「おくりっぱなし」と化し、そして形骸化させたのは、他ならぬ私たち僧侶ではなかったのか。『葬儀規範』に「葬儀は仏事である」と明記しながら、果たしてどれほど本当に「仏事」とすべく努力をしてきたのだろうか、と思うのである。

寺と門信徒の関係が希薄化する故に、これから更に「直葬」も「葬儀・寺院不要論」も現実化していくであろう。しかし、またそうであるからこそ、通夜・葬儀が初めて仏法にであう重要な「仏事」へと、より一層成し得てもいくはずである。「葬儀社との対話」を中心とした今回の私たちの取り組みも、そのために不可欠な試みであったと私は思っている。《種山組・大法寺住職》


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