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自治会の「政教癒着」に抗して(1) 藤岡崇信 [1999年7月1日(56号)]

 二月三日、歯科医院の待合室で、何気なく手にした読売紙の「神社管理費支払い拒否したら区総会に出席できず」という見出しが私の目に入りました。

 地区から「排除」されたのは、鳥栖市の元教員   で、自治会費から神社関係費を除いた額の納入を申し入れたが、聞き入れられなかったため納入を拒否し法務局に供託。しかし、その後区総会への出席を拒否され、広報文書も届けられなくなったというのです。

 当人は「戦争を経験した私には、神社にお金を払うことは納得できない。いろいろな信仰を持った人を認めないのはおかしいということを訴えたかった」と真情を吐露しておられますが、このような問題で訴訟にまで至ったというケースは多々あります。

 しかし私がこの記事を読み過ごすことが出来なかったのは、五年もの長い間、周囲から「頑固者・変人」というレッテルを貼られ、奇異の目に晒されていたのであろうという心情もさることながら、斉藤文男九大名誉教授(憲法)が「公権力性を持つ区長が神社への出費を依頼することは、憲法二十条の信教の自由に反する」と明言する問題で、しかも人権侵害を認めた県弁護士会が是正勧告を求めたのに対し、当の区長は「神社に自治会費から金を出してきたのは明治時代からの慣習で、今後も続けていきたい」とコメントしているというこの点であります。

 かっての国家神道の亡霊は今も健在であるという現状は、決して余所の問題ではなく、拙寺の問題であると思うとどうしても看過することは出来ませんでした。

 早速その夜、佐賀の知人に「遅きに失したが、問題は解決していない。地元でも出来るだけの支援をし、これを機会に憲法の『信教の自由・政教分離』に照らし、この人の言動こそ正しい、ということを世に訴えよう」と電話したところ、「全て熟知している。その方は熱心な真宗念仏者です」と、住所等を教えてくれました。

 そのA氏より「法務局の人権擁護に救済を求めたら反対向きに弾圧され、やっとの思いで弁護士会の勧告を得た有様です。ルターのように庇護者が居たり、ガンジーのように法的知識を持っておれば非暴力で戦うのも可能ですが、何もなく良心だけで一人ぼっちで戦うのですから困りぬいています。長崎市長のようにピストルの弾丸をくらったらそれこそ終わりです。(中略)侵略戦争に、神がかりさせられて、あやまちを犯した世代だものですから、何とも言いようのない有様です」と、念仏者としての思いを貫くべく、多数に屈することなく、しかも生命の危険を覚えながら、孤立無援の一路をひたむきに歩き続けてこられた心境が綴られた返信が届きました。

 やがて熊日には、この問題を受けて「自治会費・神社管理費との区別を 熊本市が助言方針。信仰の自由に配慮求める」という見出しの記事が掲載されました。

 私は早速、①熊本市のこの対応の確認、②A氏の言動こそ正当、③政教分離の真意、④ 宗教者が公の力を借りて社寺の運営をすることの非、を訴えるべく熊日の「読者のひろば」に投稿しました。
 この投稿が掲載された直後の拙寺の仏教壮年会の例会では、当然その内容が話題の中心になり、各地区の実情も報告されました。

 その時、前教区仏壮理事長のIさんと、拙寺の前仏壮会長のKさんが「四月から自治会長になる予定だが、私は今までのように自治会長がそのまま神社の世話役としてお札の配付や寄附依頼という慣習を引き継ぐ気は全くない」と言明され話し合いは一層真剣みを帯びてきました。

 これは単なる宗教間の対立の次元ではなく、会員の殆どが日曜学校・仏青・仏壮と聞き続けた「権力をたのまず、余神を崇めず、死の穢れを忌まず、吉凶禍福に惑わず、吉日良辰をえらばず、たのむべきは弥陀一仏、よるべきは念仏一行」という真宗信心の発露からであることは申すまでもないことです。 (託麻組・真行寺住職)
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